ピンチでも動じなかった。3-1の4回、長野西のエース関颯仁(はやと)投手(3年)は小諸の先頭打者に二塁打を打たれ、さらに四球を重ねた。流れを失いかねない場面。だが、心配無用だった。「自信を持ってストライク先行で投げられました」。サイド気味にテンポよく投げ、坂口を2球で追い込むと、3球目で遊ゴロ併殺。続く土屋は左飛で後続を断った。7回4安打1失点。危なげなく、勝利した。

“社会見学”が不動心を生んだ。今年1月、大槻寛監督(37)の「自分たちの枠にとどまらず、外の景色を見ることで得るものがある」という発案で、各自が希望する体験学習を行った。広陵(広島)に行き、名門高の練習を見学した者がいる。ただ、野球にとどまらなかった。高校サッカーを見て刺激を受けた者。福祉施設やホテルで働いた者。“1日お母さん”になりきり、家事の大変さを知った者。宮城の被災地で体験談を聞いた者。度胸をつけたいとスカイダイビングに挑戦した者までいた。

関颯は「精神力をつけたい」と東京・檜原村の真言宗・天光寺の門をたたいた。真冬に滝行を敢行。水温7度に「し、心臓が…」と20秒ほどでギブアップしたが、「どんな場面でも、おじけづかなくなりました」。この日のプレーにつながった。大槻監督は「みんな、腹が据わった」と目を細める。たくましさを増し、春夏通じ初の甲子園出場へ好発進した。【日刊スポーツ古川真弥】

 

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